株式会社早川工務店

株式会社早川工務店

株式会社早川工務店

家業を継ぐ気はまったく無し!!
関東の文系大学出身の異色建築屋さん!

「まだ作りかけ」という看板の前で掲載用の写真を撮っているのは蟹江の建築屋さん、早川工務店代表の早川さん。人懐っこい笑顔と、とっつきやすい人柄の理由は取材をさせていただくうちにだんだん明らかになっていきました。この「おやじおかみ図鑑」の取材も数回を重ねますが、「人に歴史あり」という言葉を毎回感じる取材班です。早川さんがお父さんから工務店を引き継いだエピソードや営業・若手の育成に関する考え方を是非ご覧ください。

早川工務店のルーツは佐古木の建具屋さんから

丹羽    早川さんの事業所は法人ですか?
早川さん  法人だよ。前株(株式会社早川工務店)です。
丹羽    お父さんの時から(早川工務店)ですか?
早川さん  そうだね。旧屋号が早川木工で、創業が昭和38年だね。法人にしてから12期目かな。
丹羽    そうなんですね。お父さんは若い時から早川木工さんを創業されたんですか?
早川さん  20才後半じゃなかったかなぁ。(しばらく考え込んで)26歳で創業しているはずだね。
丹羽    へーー。(お父さんは)どこかで修行されてて・・・
早川さん  そうそう。(父親の)実家が弥富の「佐古木」っていうところで、建具屋を経営してて。で、そこで働いていたけど、(父親は)長男ではなかったから蟹江に早川木工を創業したんだね。
丹羽    お父さんの実家が佐古木だったんですね。
早川さん  蟹江がこれからもっと発展しそう、ということで実家と相談してこっちに来たみたいだね。
丹羽    じゃあ、(佐古木で)建具屋さんはもっと前から経営されていたんですね。
早川さん  俺のおじいさんから始めていたみたいだね。
丹羽    なるほど。

営業活動はしない?「紹介」が舞い込む仕組み!

丹羽    早川工務店さんの業務内容はどういったことを?
早川さん  そうだねぇ、建築全般だけど「新築」「リフォーム」「修繕工事」が主なところかな。
丹羽    お客さんはどういった経緯で早川工務店さんに依頼されるんですか?
早川さん  基本的には全部(今までのお客さんの)紹介で依頼されるね。具体的な営業活動はしてないね。
丹羽    へーーっ。紹介で仕事を繋いで行けるってすごいですね。
早川さん  おやじの時は下請けの仕事が多くて、内装とか大工関係の細かい仕事をしていたね。今から10年くらい前からは直接(顧客さんと)やりとりしたいということから、半分以上は直接仕事させてもらってるね。
丹羽    「紹介」で依頼があるという事は、その時のお客さんに満足していただいて
いるからこそですよね。


早川さん  それ(依頼のあったお客さんに満足していただくこと)を営業活動だと思って仕事をしているね。
丹羽    そうですね!
早川さん  「家を建てよう」、「リフォームしよう」、「修繕しよう」っていう時に、やっぱり面識のない初めての会社は不安じゃない?金額も大きいし。周りで「どこかいい会社ない?」って話題になった時に紹介してもらえるように仕事してます。
丹羽    なるほどなるほど。
早川さん  でも今まではそれで紹介していただけていたけど、うちも従業員も増えてきたし、ウェブサイトを作ったり、広告宣伝のことも考えていかないとなぁ。・・・っていうのが現状です。
丹羽    「直接の仕事」も「下請けの仕事」もですか?
早川さん  そうだね。あとは、「継続して依頼のある仕事」もそうかな。某コンビニチェーンの工場の修繕を担当させてもらっているんだけど、毎年何かしら修繕の仕事があるから本当にありがたいね。
丹羽    僕も定期的に頂ける仕事はありがたいです!
早川さん  もともとはもっと規模の大きな建築会社さんが担当されていたみたいなんだけど、うちみたいに「細かい仕事」「小さい仕事」でも引き受けてくれるところが評価されたんじゃないかな。

「親父の仕事は継がない!」関東に進学・就職

丹羽    話を戻してしまうんですが、早川さんがお父さんから早川工務店を引き継ぐきっかけは何だったんですか?
早川さん  きっかけかぁ。・・・もともとは親父の工務店を継ぐ気はなくて。大学も関東の文系大学に進学したの。で、関東の企業に就職して。
丹羽    就職した先も建築関係とは関係ないですか?
早川さん  関係ないね。化学品のメーカー企業だったから。部署は営業ね。
丹羽    本当に関係ないですね。早川さん、営業お上手そうですね。
早川さん  そんなことないよ(笑) 会社でいろんなことを教えてもらえるから。
      講習を受けたり、先輩に教えてもらったりしたね。
丹羽    僕も20代の時は営業職でしたけど、押しが弱くて・・・
早川さん  それもわからないもんだよね。押しが強くてガンガン契約取ってくる営業マンもいれば、そんな風に見えないけどいつの間にか契約取ってくる人間もいるもんね。そういう意味では営業は「上手い」「下手」ではないかもね。

丹羽    そうですか。
早川さん  営業で言えば、メーカー企業の次に転職した不動産会社の営業では鍛えられたかな。
丹羽    営業の「コツ」っていうか、「極意」みたいなものはあるんですか?
早川さん  まぁ、俺にはそんなにたいそうなものはないけど・・・
      基本的には「お客さんの利益を考えてあげる」っていうことかな。当たり前だけど。
丹羽    なるほど。
早川さん  尚且つ、「押すべきところは押す」かな。不動産会社の営業の時に(先輩に)言われたの。お客さんが「買おうかな、どうしようかな」って悩んでいるときに、自信をもって勧めてあげないと不安になるよ、って。
丹羽    お客さんの背中を押してあげるんですね。
早川さん  そうだね。

転機は展覧会と共にやってくる!

丹羽    そんな関東で営業の仕事をされていた早川さんが、家業を継ごうと思ったきかっけは何だったんですか?
早川さん  シンプルに言うと、飽きたんだね。
丹羽    飽きたんですか?
早川さん  高校生の時からいろいろな国に行って仕事がしたいと思っていたから、商社に就職を希望してたの。でも希望通りにはいかずに化学品のメーカーに就職してね。
丹羽    先ほどのお話にもあった会社ですね。
早川さん  そうそう。それでもそのメーカーで何回も海外に行って仕事をしたから、ある意味目標としていたことが出来ていたのかな。
      そんな海外出張がしばらく続くうちに、飽きてきてね。
丹羽    そうなんですね。
早川さん  そんな時に日本の展覧会で「安藤忠雄と職人たち(曖昧)」みたいな催しがやっていて、見に行ったの。
丹羽    有名な建築家ですよね。
早川さん  そうだね。で、その展覧会を見たときに親父の仕事をしている姿を思い出して、こういう仕事がしてみたいなと思ったのが戻るきっかけかな。
丹羽    お父さんの姿と重なったんですね。
早川さん  でも今さら展覧会を見に行ったくらいで、すぐに地元に戻って建築の仕事に就けるなんて甘くはないし、どうしようとなって。


丹羽    えぇ、えぇ。
早川さん  少しでも建築に近いところで、知り合いの紹介もあって不動産屋に転職したんだね。
丹羽    先ほどの営業の「コツ」のときに話題になった不動産会社さんですね。
早川さん  そうそう。
丹羽    さらっと建築の仕事がしたいって仰ってましたけど、学生の時から「家業を継ぐ気はない」っていうことで関東の大学に進学されたじゃないですか。お父さんにはどのタイミングで戻って建築の仕事がしたい、というお話をされたんですか?
早川さん  不動産会社に転職して、そこに勤めていた時に少しずつ話をしていったかなぁ。
丹羽    お父さん、喜ばれたんじゃないですか?
早川さん  うーん、直接は聞いてないけど、母親からは(父親が)喜んでたって聞いたね。でも(息子が家業を継ぐことへの)不安もあったと思うよ。
丹羽    それはどういう・・・?
早川さん  俺も20代後半だったから、息子がゼロから建築の仕事を始めることへの漠然とした不安だよね。できるかどうかも定かではないし。
丹羽    未経験ですもんね。

遅咲きの二代目が信頼される理由とは?

早川さん  自分は自分で、蟹江に戻って父親の仕事を手伝いながら会社の現状を考えてみると、不安だったね。
丹羽    会社の現状っていうのは・・・?
早川さん  その時は下請け仕事が多くて、なかなか利益も取れなかったの。それに父親から会社を引き継いで法人にするときなんかは、会社に資金があまりないことがわかって。「これは稼がないと」と思ったね。
丹羽    最初に伺っていた、「直接の仕事」を取りに行くっていう方針に繋がっていきますね。
早川さん  そうだね。下請け仕事ももちろん大事だけどね。
丹羽    これも初めに伺っていた「紹介で仕事を頂く」っていうのを掘り下げたいんですけど、「お客さんに、知り合いを紹介していただける要因」っていうのは何だと感じてますか?
早川さん  うーーーん・・・これは自分で思ってるだけなんだけど、やっぱり「資格を持っている」っていうのは大きいんじゃないかと思ってる。
丹羽    「資格」っていうのは・・・?

早川さん  一級建築士の資格のことね。
丹羽    それは安心しますね。
早川さん  あとは、なるべく色々な資料を用意して、どんな工事をどういう工程で行うか。これをこまめにお客さんに話すようにしているね。
丹羽    なるほど。
早川さん  もう一つ、リフォームショップなんかと競合になったりすると・・・
丹羽    最近流行ってるやつですね。
早川さん  そうそう、でもそういうところは営業マンが来てお客さんと話をするでしょ。そうするとやっぱり営業マンが話をするのと現場で実際に作業をする人間が話をするのでは話の深みも違うし、説得力があるから大抵仕事を頂けるね。
丹羽    会社の代表者に話してもらえるっていうのも信頼を得られているのかもしれませんね。

頼れる若手従業員を消防団で?獲得!!

丹羽    早川さんが戻ってこられて、お父さんのお仕事を継いだみたいに、早川さんの次はどうしようか、というのは考えていらっしゃるんですか?
早川さん  もう決まってるよ。従業員に引き継ごうかと思ってる。
丹羽    へぇー。その方はご存じなんですか?
早川さん  話してないけど、ある程度はそのつもりでいると思うよ。まぁ、その前にあいつが独立するかもしれないけどね。この業界はそういう事も多いから。
丹羽    早川さんお子さんは・・・?
早川さん  娘二人だね。
丹羽    なるほど。
早川さん  だから従業員に譲るってことはなくもないんだけど、俺が勝手にささやかな夢を見ていることがあって。(跡継ぎにするっていう事とは関係なく)下の娘が絵を描いたり何かを作ったりすることが好きなもんだから、将来は女性建築家っていう職業もあるぞって言い聞かせてるの。女性建築家は今ブームっていうのもあるから。
丹羽    将来が楽しみですね。
先ほどの従業員の方はどれくらい早川工務店さんでお勤めなんですか?
早川さん  今で9年目かな。
丹羽    よその工務店さんから引き抜いてきたとか・・・?
早川さん  いやいや、消防団で。
丹羽    えぇっ?
早川さん  消防団の団員にいて、そこで知り合って。当時(その従業員さんが)無職だったの。で、「うちで働いてみるか」っていう話になって。


丹羽    それで9年続けられるってすごいですね。今、若者の転職率も結構高いって聞くのに・・・。早川さんの人柄ですね。
早川さん  まぁまぁ。本人もうちで働く前は塗装業だったり、土建屋で働いていたみたいだから、腰を据えて長く働かないとっていう自覚はあったかもしれないね。
丹羽    はい。
早川さん  最近少しずつ(従業員に)話しているんだけど、うちももっと業績を伸ばしたいし、給料もたくさん払ってあげたい。だから例えば仕事を取ってきたり、普段俺がやっている業務を代わりにできるようになってきたら給料にも反映されるよ、って発破をかけながら育てているね。
丹羽    跡継ぎのお話なんですが。「家族で引き継いでいこう」っていう事はないんですね。僕も娘が一人いるだけで、しかもまだ小さいですし、自分の仕事を継いでもらおうとか、跡継ぎを探そうなんて思わないんですけど・・・。
早川さん  それは征太郎(丹羽)がまだ若いからそう思わないだけで、俺はもう50歳になったんだけど。建物を新しく建てる、リフォームするってなると、お客さんからすれば「この後建物に何かあった時に、この人に頼んで大丈夫かな?」って考えるんだよね。
      俺だって、他の業者にお願いするときに一人で仕事をやってる60代、70代の業者さんだと不安になるもんね。 丹羽    確かにそうですね。
早川さん  そう考えると、次に任せられる人間がいるだけで「早川工務店さんはまだまだ大丈夫だな、何かあった時にお願いできるな」って思ってもらえるからね。
丹羽    勉強になります!

この業種を志す若人へのエール

丹羽    そうですね。それではこれまでに仕事をしてきた中で、困ったエピソードは何かありますか?
早川さん  それはやっぱり"出来上がってみたら思っていたのと違った"というのが困るかな。
丹羽    それ、わかります。僕の業界でもあります。
早川さん  既製品で、事前に実物を見せることが出来ないから。カタログをお見せしたり、外壁の色を実際にお見せしたり、完成デザインを出来るだけリアルに描いたものをお見せしたりはするんだけど。それでも何回かあるね。

丹羽    これからの早川工務店さんの目標というのは・・・?
早川さん  若い従業員を育てることだね。それも自分と同じような仕事を押し付けることじゃなくて、その従業員の得意な分野を伸ばして、スペシャリストになってもらうような形で、育てていきたいね。
丹羽    それは何か意図があるんですか?
早川さん  そうすればその分野の仕事は全部任せることができるから。本人のためにもなるしね。
丹羽    「この分野で働きたい」という若い方にエールを送るとしたら何かありますか?
早川さん  うーん。この業界は学歴とか関係なくて、やる気のある人間はどんどん技術を身に着けて、稼げるようになる。そういうところに魅力を感じたり、モノづくりが好きな若い人には良い職業だと思うな。

家業を継ぐ気がなく、関東へ進学・就職した早川さんが、現在蟹江で早川工務店を営む に至った経緯は大変興味深いものでした。営業職を経てからの家業の継承は早川工務店さ んのお客様との付き合い方や、紹介で仕事を獲得するといったところに確実に良い影響を 与えていると取材をしながら感じました。早川さんは否定すると思いますが、工務店の仕 事を継ぐための必要なスキルを取得する、「決められた回り道」だったんじゃないかなと。 そんな気がしてならない取材班でした。


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